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なぜ「姿勢」のことを「体位」というと怒られるのか

ここ1年ぐらい歴史を学ぶことが面白くてたまらない
 
過去を知ることで現在を理解することができるからだ
 
今日は英語の歴史を調べてみた
 
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英語とは現在のイギリスの土地で生まれたものではない
 
発祥はドイツ語と同じく、ゲルマン人が使っていた言葉だ
 
英語の歴史の始まりは、5cにゲルマン人大移動でゲルマン人であるアングル人、ジュート人がケルト人が住んでいたイギリスに侵攻してきたことに始まる
 
結果としてケルト語を使っていたケルト人たちは、スコットランドなど辺境の地へと追いやられてしまった
 
つまり、英語は異民族の言葉だったのである
 
次に大きな変化があったのが、9世紀ごろから(現デンマークの)ユトランド半島よりヴァイキングと呼ばれるデーン人たちとの交流が始まったときである
 
古北欧語を使うヴァイキングとのやり取りの中で古北欧語の影響を受けるだけでなく、バックグランドの違う異民族との意思疎通の必要性から極度に文法が簡略化されたのだ
 
英語が他の欧州の言葉よりも文法構造がシンプルな理由はここにある
 
次に大きな変化があったのは、11cのノルマン人の侵攻のときだ
 
フランス北部のノルマンディーからノルマン人がイギリスに侵攻し支配するようになったことでフランス語が公用語となり、古英語の語彙の85%が失われたという
 
このときにフランス語の語彙が大量に流入した
 
英語は日陰へと追いやられたのである
 
この状況は13cにノルマンディーの領地が失われて14cの100年戦争で英語が表舞台に返り咲くまで続いた
 
そして、14cのペスト大流行でヨーロッパの人口の1/3が失われ、労働者の地位が向上した際に、庶民の言葉であった英語に再び光が当てられるようになったのである
 
このころから公的文書にも英語が用いられるようになり始めた
 
そして、最後に大きな影響を受けたのが16cのルネサンス(文芸復興)によるラテン語への回帰である
 
このときに、新しい概念の数々がラテン語によって表現されるようになった
 
このような流れを受けて現在の英語は、素朴で直接的な表現を得意とする大和言葉的なゲルマン語と、交渉で抽象的な表現を得意とする漢語的なラテン語、フランス語が入り混じったような言葉となっているのだ
 
だから、同じ「始める」という言葉でもゲルマン語由来のstart、フランス語由来のcommence、ラテン語由来のinitiateが混在していて、これは日本語における「始める」と「開始する」のようなニュアンスの違いを表現している
 
getとobtainが、「手に入れる」と「獲得する」の違いに対応すると言ってもいいのかもしれない
 
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そうそう、ニュアンスの違いの大切さといえば1つ思い出深い経験がある
 
高校生の頃に、立っている「姿勢」のことを大声で「体位」と表現していたら(もちろん悪気はない)友達に「体位とか言うなよ」と笑いながら怒られたことがあって
 
僕は「同じ意味なんだからいいじゃないか!」と声高に主張したのだけど、聞き入れてもらえなかった
 
思い返せばそれは、たとえ意味は同じでも、人は使う場面や、言葉から受ける印象、すなわちニュアンスを感じ取り、言葉を使い分けているということの証左であり、
 
つまるところ、外国人の日本語が発音以外にも違和感があるのはそういうことであって、本当に言葉を使いこなすためには、意味の違いだけではなく、微かなニュアンスの違いまで意識して使う必要があるということではないだろうか